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ときのこえ
2023.04.01(土)

ときのこえ2023年3月号

支えられて生きる

 徳永幸次郎


 「わたし」が生きていることに、どれほど多くの不思議があり、どれほど多くの人の支えがあるかを考えると、生きていることはそれ自体が感動です。わたしもそれを実感できるようになったことを感謝しています。
 
 それまでは病気どころか、日常生活でもほとんど不調を感じたことがなかったわたしは、五年前、当時余命十三カ月と言われていた難病、全身性アミロイドーシスになりました。(昨年九月に亡くなったアントニオ猪木さんも同じ病気でした。) そして、三年前の冬には、「来年の桜は見られないので、家族は最後の準備を」と医師に告げられました。家族だけでなく周りの方々にもお知らせしておいたほうがよいと思い、信仰の友人たちにもこのことを知らせたところ、たくさんの方々が大変心配してわたしのために熱心に祈ってくださいました。
 
 桜の季節を前にした通院の日、不審そうに検査の結果を見ていた医師に、「何かしましたか?」と尋ねられました。劇的に改善した、考えられない変化が表れていたのです。それまでと違う薬を飲んだわけでもなく、変わったことをしたのでもなく、心当たりといえば、多くの人がわたしを支えるために祈ってくださったことしかありません。あの時以来、桜を見ると、どれほど多くの方々に支えられて生きているのだろうかという感動を覚えます。
 
 人が生きていくためにはたくさんの人の支えが必要です。世界中には、たくさんの助けを必要としている人々がいます。救世軍では、毎年この時期に克己週間募金運動をおこない、世界中の助けを必要としている人々のニーズに応えます。社会福祉、医療、教育、地域開発、災害被災者支援、難民支援の働きがなされています。また、エイズ対策プログラム、人身取引対策、貧困対策を進め、開発途上国では、職業訓練、識字教育、衛生教育などによる自立支援をおこなっています。一人ひとりが、たくさんの人に支えられて生かされていることを感謝して、この運動に加わりたいと思います。また、より多くの人が加わることで、さらにお互いを支え合う働きとなれば幸いです。
 
 この働きの根本には、今から二千年前、わたしたちのために命を献げてくださったキリストがおられます。神の御子イエス・キリストは、罪の暗闇の中で苦しむわたしたちを救うために、すべての人の身代わりとして十字架にかかり、命を献げてくださいました。神の前に出る時、誰一人として自分は全く正しいと言い切ることはできません。

では、どうなのか。わたしたちには優れた点があるのでしょうか。全くありません。既に指摘したように、ユダヤ人もギリシア人も皆、罪の下にあるのです。 次のように書いてあるとおりです。「正しい者はいない。一人もいない。」
ローマの信徒への手紙3章9、10節

 キリストはその正しくないわたしたちを救うためにご自身を献げてくださったのです。誰でも、わたしたちを罪から救うために来てくださったイエスを信じる時に、新しい命を与えられます。

実に、人は心で信じて義とされ、口で公に言い表して救われるのです。
ローマの信徒への手紙10章10節

 わたしたちのために命を与えてくださったキリストを思う時に、わたしたちもまたお互いのために与える者、分かち合う者、支え合う者となりたいと願うようになるのです。わたしたちを愛し、命を与えてくださったイエスを信じる時に、わたしたちも神の愛を知り、人を支え、人に支えられて生きる人生を歩むようになるのです。
 
 わたしたちの周りには、支えを必要としている人がいます。わたしも誰かに支えてもらう必要があります。わたしたちの人生を全面的に支えてくださるイエスを信じて、お互いに支え合って生きる、感謝と感動に溢れた人生を歩みたいと思います。
 
 美しい桜の季節、今年も支えられていることを感謝したいと思います。今年の桜に皆さんはどのような感動を覚えられるでしょうか? 人生を力強く支えてくださるイエスを中心にして、お互いに支え合う恵みの時となりますようにお祈りいたします。

(救世軍士官〔伝道者〕)

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