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救出、救命、救済、救援という文字が、今年ほど新聞紙面やテレビのニュース等で見られたことはなかったのではないでしょうか。3月11日に発生した未曽有の大地震―東日本大震災や9月の台風12号などによる被害で、尊い人命や人家をいとも簡単に奪ってしまう自然の猛威を、私たちは、目の当たりにいたしました。
救世軍が日本で働きを始めた翌年1896年(明治29年)にも、宮城、岩手、青森各県を大津波が襲い、甚大な被害をもたらしました。当時、働きを始めて間もない救世軍は、さっそく義捐金を募り、被災地に送りました。英語の表記のThe Salvation Armyを日本語の「救世軍」と訳したのは、東京市長にもなった尾崎行雄ですが、正に「名は体を表す」の諺どおり、救世軍の活動は、日本という地域社会を救うための働きであり、救いの戦いの働きでもありました。
新約聖書ルカによる福音書19章1節に、徴税人ザアカイの物語が出てきます。聖書を読んでいる方ならすぐ思い出される、有名な物語です。
当時ユダヤの国は、ローマ帝国の属国として支配され、その敵であるローマ人のために税金を取り立てる徴税人は、敵国のスパイ、売国奴と言われ、嫌われていました。ザアカイはその職業の頭でしたから、当然嫌われていたでしょう。しかしその彼は、イエスが通る所へ先回りし、背が低かったために、周囲の目もはばからず、いちじく桑の木に登ってまでイエスを見たいと願ったのです。イエスは、そのザアカイ一人のために、彼に近づき、声をかけて彼の名を呼び、彼の家に泊まりました。これを見ていた人々は、
「イエスは、罪深い男のところに行って宿をとった」と非難しました。けれども、ザアカイは、自分の生き方が間違っていたことを悟り、
「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します」と告白したのです。イエスは、その告白を聞き
「今日、救いがこの家を訪れた」と言われました。
ザアカイの救いは、お金や物だけによる救いではなく、神の約束にある「救い」でした。すなわち、創造主なる神が、この天地万物を創造する前からご計画していた救い――御子イエス・キリストをこの世界に送り、キリストの十字架上での身代わりの死を通して、人類が犯して来た罪を贖うという「救い」です。神の御心と矛盾する悪の力に支配されてきた世界の歴史と様相を、神は、ただ、御子の十字架という一点によって、救い、赦そうとなさったのです。これこそが、人類救済の最大の神のご計画であり、真の救いなのです。ザアカイの物語の結論は、
「人の子(キリスト)は失われたものを捜して救うために来たのである(ルカによる福音書19章10節)というものです。
救世軍は、「世」を救う神の軍隊として始まりました。その究極の目的は、イエス・キリストによる救いです。救世軍の「救」の字は、私たちの本質である霊魂の救いを得ること。すなわち「救霊」です。日本は震災を通して救命や救援の尊さを体験しました。更に「救霊」の必要を知ることが重要です。今こそいにしえのザアカイの物語で言われているように、魂の救いの価値をキリストの救いの中に見いだすこと、これこそが、本当の意味の日本という「世」を復興させる「救い」です。
(救世軍士官(伝道者))
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