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春は出会いの季節です。進級、進学、就職、転居……。新しい環境に期待を抱きながらも、新たな人間関係を築いていくのに不安を感じることは誰しもあるでしょう。
自分で希望して手に入れた環境であっても、実際に入ってみるとイメージしていたものとは違っていたという人も……。思うように自分が出せず、気づいてみると孤立している自分、周囲に適応できていない自分がいて、「こんなはずじゃなかった‼」と、理想と現実のギャップに愕がく然ぜんとしてしまう。それに気づけばまだいいほうで、自分の状況を認められずに、もがき続け、徹底的に自分を偽り、傷つけ、立ち直れないほどになってしまっている……。
神様の独り子キリスト・イエスの愛弟子ペトロは、
「あなたと一緒ならば死んでもかまいません!」
と言ってほどなく、イエス様を裏切ってしまいました。十字架にかけられるため捕らえられたイエス様の様子をひそかに見ていた時に、
「あなたもイエスの仲間だ」
と指摘され、
「そんな人は知らない」
と言ってしまったのです。それは、ペトロにとって人生最大の失敗でした。
その後、イエス様を裏切ったペトロは破門されたでしょうか? いえいえ、そんなペトロのためイエス様は、
「わたしはあなたのために、信仰が無くならないように祈った。だから、あなたは立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい」(ルカによる福音書22章32節)と前もって言われていたのです。
また、ペトロが立ち直るために、裏切った彼に注がれるイエス様の温かいまなざしがありました。聖書に、
「主は振り向いてペトロを見つめられた」(ルカによる福音書22章61節)とあります。失敗を責めることなく、寛容に包み込むイエス様の愛のまなざしと祈りが、ペトロを立ち直らせました。
「立ち直る」とは、立ち返る、もとに戻る、失われた自分をもう一度取り戻すことです。ペトロは失敗を通して、心からイエス様を愛する自分を取り戻すことができました。そして他者の痛みに寄り添うことのできる真のリーダーとなり、現代のキリスト教会が存在する土台となったのです。
ペトロにとって裏切りという失敗は、「兄弟を力づける」という、イエス様によって与えられた使命・ミッションへと変えられました。
「自分のいる場所を超える」決断をしてそれまでの場所から出なければ見えないものがあり、立ち位置を変えることで見えてくるものがあります。ペトロは、この失敗を経験したからこそ、立ち位置を変え、他者の痛み、苦しみに共感できる人へと変えられた、と言ってもいいでしょう。
人は、人生の目的―自分は何のために生まれてきたのか―を知る時に、生きる力を得られます。神様から与えられる使命・ミッションの中には、失敗を通して得ることのできるものもあるのではないでしょうか。私たちの失敗にも、立ち位置を変えるきっかけとなるものがきっとあるでしょう。
神様を信じて生きるということは、失敗をせず、試練に遭わないように守られて生活できることではありません。神様が、それらを通しても立ち直らせ、新たに歩み出す力を与えてくださる日々の積み重ねなのです。
あなたも神様を信じ、失敗を恐れないで、あなたの使命・ミッションに向かっていきましょう。イエス様の愛のまなざしと祈りは、今、あなたにも向けられているのですから。
(救世軍士官〔伝道者〕)
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