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救世軍の誕生は、今から149年前の1865年にさかのぼります。今日はご一緒にその発祥地東ロンドンを訪れてみましょう。
ロンドン地下鉄および都市近郊電車ホワイトチャペル駅からほど近い、マイルエンド通りのブース・メモリアル(記念碑)バス停前。救世軍創立者、ウイリアム・ブースが、天を見つめ、天を指さしてハレルヤ(「神をほめたたえよ」の意)と、救世軍式の敬礼をする全身像が立っています。近くには、ウイリアム・ブースの胸像やブース・ハウスという、街頭生活者や様々なニーズのある人々の生活を支援する救世軍の大きな社会福祉施設があります。この地域には、多くのバングラデシュ系の住民が住み、行き交う人々も、立ち並ぶ屋台も異国情緒豊かで、ロンドン最大のモスクもあります。
救世軍が始まった当時、この町には貧困にあえぎ、生きる目的を見失い、罪悪に身を落としていく人々の惨状がありました。ウイリアム・ブースは、当初数週間滞在する予定で入ったこの町において、このような惨状にある人々の救いこそが、神から与えられた使命と感じたのでした。現在でも、ウイリアム・ブースが初めて大衆に神の愛を語りかけたパブ(居酒屋)前の広い歩道、救世軍の最初の本部となった建物、天幕(テント)伝道集会の場所などが、近くに点在しています。
ブースの立像の近くにある弁護士事務所の建物の壁には、ここマイルエンドに関わりの深かった人々や建物を描いた大きな壁画があります。ロンドンオリンピックにあわせ、この事務所が描かせたもので、エリザベス女王、エレファント・マン、 この事務所の創業者、有名無名の人々や建物が描かれています(左下の写真)。最前列に描かれた三人をご紹介しましょう。右は一番大きく描かれた劇作家、評論家、社会主義者であり、『ピグマリオン(映画『マイ・フェア・レディ』の原作)』、『救世軍バーバラ少佐』などの作品を描いたバーナード・ショーです。両手を顔の前において、まぶしい光を遮さえぎるようにしています。左は英国海軍士官・海図作成者・探検家である通称キャプテン・クック。絵の枠からはみ出すほどの望遠鏡を手にして遠くを見ています。真ん中はウイリアム・ブースです。救世軍の制服制帽に身を包み、開いた聖書を手に持って何か語っているようです。
壁画の作者の意図はわかりませんが、私にはこの三人が、ロンドン中心街から、人間・芸術・社会構造=手、科学技術や探求心=望遠鏡、キリストによる罪の赦しと神の愛=聖書、という三つの異なる立場で、未来を見ているように思えてなりません。ウイリアム・ブースの視点は、救い主イエス・キリストの視点そのもので、「イエスは、……また、 群衆が飼い主のない羊のように弱り果て、打ちひしがれているのを見て、深く憐れまれた」(マタイによる福音書9章36節)とあるとおりです。ここで始まった救世軍の働きは、現在126の国と地域にまで広がっています。そして、神の愛に動機づけられ、救世軍の拠点のない地域でも、人道支援、医療、社会福祉を通して、人々のニーズに応えているのです。
東ロンドンの旅はいかがでしたか。今も、救世軍は世界中のあらゆる場所に―皆さんのいらっしゃる所にも―救いをお届けしたいと願っています。創立者ウイリアム・ブースと同じ使命と視点をもって。
(救世軍士官〔伝道者〕)
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