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もし、みなさんの食事に誰かが毎日少しずつ毒を入れていたとしたらどうでしょうか?
薄気味悪い話で始まったことをお許しください。しかし、ある面において、私たちは誰もがこのようなことをしているのです。しかも、その毒を食事に入れているのは私たち自身です。
その毒とは、何でしょう。それは「憎しみ」です。日常、大小さまざまな形で私たちの中に生まれ、私たちの中に溜まっていきます。
それがある日、堰せきを切っったように流れ出すとき、私たちは人を傷つけ、ののしり、相手の命を徹底的に破壊するのです。
8月、私たちは広島、長崎それぞれの原爆の日と終戦記念日を迎えます。それらを通して、戦争の犠牲者としての私たちや私たちの家族をイメージする方も多いことでしょう。しかし、私たちは、犠牲者であると同時に加害者であることを忘れてはなりません。
73年前、真珠湾攻撃に際し、「トラトラトラ」と打電した総指揮官 淵田美津雄という人物がいました。彼は戦局が悪化しても、「アメリカ人は皆殺し」との信念を変えませんでした。
一方、アメリカ空軍にはジェイコブ・ディシェイザーという人がいました。彼は真珠湾攻撃のニュースを聞き、
「今に見ていろ、日本人、皆殺しにしてやる」と復讐心に燃え、日本本土空襲に志願します。1942年に爆撃手となり、名古屋を爆撃しました。その際に日本軍の捕虜となり、収容所で残酷な仕打ちを受け、ますます日本人を憎んでいきました。
憎しみは循環し、私たちの力では容易にその悪循環を止めることはできないものです。憎悪はやがて相手のみならず、自分をも破壊し始めます。
終戦後、真珠湾の英雄から戦犯になった淵田は世の中の変わりように打ちのめされ、アメリカ人も日本人も憎むようになりました。そして心のすさみきったとき、渋谷駅で偶然一枚のパンフレットを受け取ります。それは、「私は日本の捕虜でありました」というタイトルのパンフレットでした。著者はディシェイザー。
ディシェイザーは収容所で営まれた友人の葬儀の際に、看守から聖書を受け取りました。そして、そこに書かれていた、十字架上でまさに死を迎えようとするイエス・キリストの言葉に出合います。
「父よ、彼らをお赦ゆるしください。自分が何をしているのか知らないのです。」(ルカによる福音書23章34節)
赦されるべきは日本人であり、また、自分自身なのだと彼は気づきました。
しかし、一方でまだまだ憎しみは止やみません。収容所の日々で
「こんな日本人をどうやって愛せというのだ」との思いがこみ上げたとき、
「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」(マタイによる福音書5章44節)
とのキリストの言葉が聞こえたのでした。
「憎しみ」という毒を中和する特効薬は、神の赦しです。聖書の言葉は人を変えます。それは人の心を光の方向へ向けさせるのです。
パンフレットを読んだ淵田は後に牧師になり、アメリカで伝道を始めました。真珠湾攻撃の反省、無知が戦争を引き起こす。この二点を強調する旅をしました。
一方、ディシェイザーも牧師になり、自分が爆撃した名古屋で伝道をしたのでした。
憎しみは人を滅ぼします。けれども神の赦しはすべての人に命を与えます。神は願う者に、喜んで赦しを与えてくださいます。
(救世軍士官〔伝道者〕)
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