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「だから、明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である。」
(マタイによる福音書6章34節)
これは聖書の一節で、イエス・キリストが言われた言葉です。いつの時代も、どこの国でもどんな人にも思い悩みは尽きません。
イエス様は言われます。
「だから、言っておく。自分の命のことで何を食べようか何を飲もうかと、また自分の体のことで何を着ようかと思い悩むな。命は食べ物よりも大切であり、体は衣服よりも大切ではないか。」(同6章25節)
人間が生きていく上で衣食が欠かせないのは当然のことです。人は、生きていくために当然のことだからこそ、衣食について思い悩むのです。衣食、それは、「わたしはどのように生きていくのか」ということに通じていくからです。
また、わたしたちは自分のことだけではなく、愛する人がいればその人のためにも悩みます。家族のため、友のために悩むのです。
思い悩みはわたしたちの周りにあふれていますが、イエス様は「明日のことまで思い悩むな」と言われます。
「空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりも価値あるものではないか。」(同6章26節)
このように言われたイエス様は、このことを信じ、生き抜いた方でした。それはイエス様が、人が生きていくためには、悩みがたくさんあることを十分知っておられたからです。自らも思い悩み、だれよりも人々の悲しみや苦しみに思いを寄せることのおできになる方が、「思い悩むな」と言っておられるのです。
「思い悩むな」と言われるイエス様ご自身が、非常な思い悩みを経験されました。イエス様は罪を犯されなかったにもかかわらず、罪人とされ、弟子に裏切られ、ムチ打たれ、最後には十字架につけられ、殺されてしまいます。
しかし、イエス様は、三日目に復活されることを通して人間の究極の悩みである「死」からの解放をもたらしました。
ずっと西の方ばかりを見て、「自分にはなぜ太陽が昇らないのか」と思い悩む人は、沈んでいく太陽ばかりを見ることになります。太陽は、東から昇り、西に沈んでいくものですから、西の方角ばかり見ていたのでは、いつまでも昇る太陽を見ることはできません。西に目を向けている人が、昇る太陽を見たいと思うなら、体を百八十度転回し、東を見るほかないのです。
新年に初はつ日ひ の出を見ようと息子と朝早く起き、まだ暗いうちに海岸に向かったことがあります。その海岸には多くの人が、新年最初の日の出を見ようと集まっていました。わたしたちはその場所に初めて行きましたが、おそらく何回か初日の出を見に来ている周りの人たちを見て、きっとあの方向に日が昇るのだろうと見当をつけました。初めての場所では、地元の人たちの様子を見て行動するより安全なことはありません。そして、確かに目当ての方向に日は昇り始めました。
わたしたちを思い悩みから解放してくださるイエス様は、昇る太陽のように人生を明るく照らしてくださいます。救世軍は、一人でも多くの人に日の昇るところを指さ し示したい、と祈りつつ活動しているのです。
(救世軍士官〔伝道者〕)
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