お知らせ

NEWS
ときのこえ
2022.03.01(火)

ときのこえ2022年2月号

心と体をケアする

 吉田 眞


澁澤と救世軍の理念
 昨年のNHK大河ドラマの主人公澁澤栄一は、いろいろな形で救世軍の活動を支えました。その背景には、澁澤の「道徳経済同一説」が、救世軍の「霊と心と体」に奉仕する精神に似通っていたことがあると言われます。「道徳経済同一説」とは、道徳心に裏付けされた利益の追求が本当の資本主義である、という考え方で、「道徳が欠けていたならば、いかに経済上の発展があったとしてもいずれ争いが起き、経済は破綻してしまう」というものです。

 事実、彼は、明治四十年に救世軍の創立者ウイリアム・ブース大将が来日した際に、東京市会議事堂で開催された歓迎会において、次のような歓迎の言葉を述べています。要約すると、
 「わたしは救世軍が、二つの性質をもっていると聞いている。キリストの福音を伝えるという点では宗教団体であり、貧しい人や虐げられた人たちを救済することに力を尽くしているという点では社会事業的である。わたしは、その宗教的活動については大きな敬意を払い、社会事業的働きについては感謝をする。本来宗教の使命は、神と人との調和、人霊の救済にあるのであって、その目的を達成しようとすれば、霊心と肉体との両方面にわたって救済をしなければならない。なぜなら、人は霊心的存在であるとともに、衣食を必要とする肉体的存在だからである。ブース大将は、救世軍を経営するにあたって、一つに偏することなく、福音の宣伝によって霊心を慰め、諸種の社会的事業によって実際的救済をおこなっている。いわゆる、左手に聖書を掲げ、右手にパンを携えてその事業をおこなっている。それ故わたしは、この老偉人を心から歓迎する。」

イエス・キリストによって
 救世軍の働きは心と体の両方に仕えるという理念の上に成り立っており、それは聖書の考え方に沿っています。

 歩くことのできない一人の男がイエス・キリストのもとに連れて来られるという話が聖書に載っています(マルコによる福音書2章1~12節、ルカによる福音書5章17~26節)。この人は、体が病んでいるだけでなく、心も病んでいます。イエスがあちこちで奇跡を起こしていることを聞き、彼の四人の友人が、彼を床に乗せてイエスのところに運んできます。イエスは、彼に向かい、「あなたの罪は赦された」と言います。彼が、心も病んでいたことを示しています。そして、さらにイエスが「起き上がり、床を担いで家に帰りなさい」と命じると、彼は立ち上がり、歩くことができるようになるのです。

 さて、「歩くことができなかった」事実の中に、彼のもっていた本当の病が顕されています。その事実によって象徴される状態は、まず、人は本来、自分一人では歩けない、すなわち他者の助けを要することであり、さらに、そのことを自覚しない人間の傲慢さが示されます。また、人に運ばれているという姿からは、周りの環境や、価値観に揺れ動いているわたしたちの姿が見えます。そこにキリストが、「床を担いで歩け」と命じます。その結果、彼は、実際に歩くことができるようになるとともに、変わることのない基盤、価値観の上に立った本当の自立を手に入れます。

 人は、まさに心と体から成る存在であり、その両方へのケアが、キリストによってなされるのです。

(救世軍士官〔伝道者〕)

ときのこえ2022年2月1日号をダウンロード(PDF)

あなたの支援で
救える人々がいます

あなたの小さな心遣いで貧困や病気に苦しんでいる人、教育を受けられない子どもたち、災害の被災者などを助けることができます。あなたの想いを彼らに届けることができます。ご支援という形で寄付に参加してみませんか。

寄付をしてみる